1.はじめに

 技術分野のものづくりでは、設計の理由がとても重要です。生徒自身が「自分はなぜこの設計にするのか」「これが本当に自分にとって便利なのか」などと問い続けられるような授業を展開したい、と、いつも思っています。結果的に1年生の材料加工の製作題材は、キットものではなく、一枚板を利用しての自由設計としています。

 ある女子生徒が、「2歳の妹のための椅子をつくりたい!」と主張してきました。・・・困りました。材料はアガチス一枚板(1200×210×12)ですので、こちらから制約として「人が座るいすや机はダメ、おもちゃスタンド的なディスプレイ椅子ならばOK。」としています。普通なら「他のものを」と勧めるのですが、でもその生徒の必要感と姉としての義務感はとても強く、僕も何とかしてあげたいと思うようになりました。


2.材料探し

 椅子ですから、角材と厚めの板材がほしいです。生徒の要望は「2歳児用椅子」ですから、そんなに大量は要りません。カタログにはちょうどよいものはないですが、、、。ありました。ホームセンターです。
 新潟市亀田にあるホームセンタームサシの2階には、様々な材料が取り扱われています。そのなかにありました。さまざまな大きさの材料がありますが、まずは座板用。
 800×280×18ほどの北海道産朝田の木を選びました。。樹皮を剥いだままの板材(いわゆる耳付き板)。写真@参照。2,000円ほどです。椅子の座面としては、この板材の半分で十分ですので、座板で約1,000円。
 続いて、足となる角材。2歳児の足は短い♪→角材も、一本200mmもあれば十分です。900×40×40の桜の木。1,000円。ちょっと高価ですが、とても丈夫で安心です!
 その他の細かい部品も含めて、合計2,500円ほどで足りそうです。生徒一人の実習費は3,500円ですので、十分範囲内です。


3.材料の調達

 当然ですが、これらの材料を自分で購入してくるわけにはいきません。業者さんにお願いし、購入してきてもらいます。その後、他の生徒と同様に、一人3,500円の木材加工材料費として請求してもらいます。業者さんは大変かと思いますが、、、。ありがたい話です♪


4.授業時間内での製作

 角材ですので、当然のように「ほぞ加工」をさせたくなります。しかし、そんな余裕はありません。作業時間が足りませんし、その生徒だけに「のみ」や「胴付きのこぎり」を指導するゆとりもありません。どうしましょうか?

 悩んだ結果、『ダボ接ぎ』を選択してみました。

 ボール盤で材料の両側に穴を開け、ダボと木工ボンドでつなぐだけ。ボール盤による正確な穴開けがマスターできれば、とても楽です。ここで問題が。角材のこぐち面に正確に穴を開けるには、角材を垂直にしっかりと固定することが重要。通常の万力ではX軸を垂直にできてもY軸が斜めになりやすく、さらに穴を開けている最中に材料が斜めに傾いたりもします。角材のこぐち面への穴開けは、生徒にとっては、とにかく難しいのです。どうしましょうか?

 こたえは万力にありました。写真A〜Cをみてください。押さえる部分を様々な角度に変えることができます。これで生徒でも角材を正確に垂直に立て、固定することが可能となりました。

 これらによって、小さいサイズではありますが、椅子も十分に製作できることがわかりました。写真Dは、実際にあの女子生徒が製作した「2歳の妹のための椅子」です。平成26年度の創造ものづくり教育フェア(県作品展)で、新潟県技術・家庭科研究会会長賞をいただきました。

松緑職人組合

2014.12.15
実践報告 手作り腕時計の製作(選択技術・家庭科)
技術分野 授業内での椅子の製作
実践報告 手作り腕時計の製作(選択技術・家庭科)